住生活

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米沢の地名

人々がこの地に住み着いてから、悠々たる時の流れを経て今に至るなか、記しても余りある歴史と人々の生活を物語り往時をしのぶことのできるひとつの方法として、地名をとりあげることができると思います。数十年前の町名改称による新町名の施行や、町並みも発展を遂げて日々変わりゆく現在において、いまの子供たちは、昔の人々の暮らしとあゆみに触れる機会を徐々に少なくしてきているように思われます。


「上杉の城下町米沢」町名のおこりとその歴史的背景

米沢には美しく彩色された品格のある城下絵図(藩の御用絵師岩瀬家が描いた古地図)が多く残されています。それは、江戸時代連綿として上杉氏が米沢城を居城としたこと、空襲に遭わず、大火の被害からも免れたこと、人々により資料が大切に保存され続けたことによるものです。それらの絵図は、今なお多くのことを私たちに語りかけてくれます。 松川、鬼面川、羽黒川の複合扇状地に築かれた城下町米沢。城は平城で、本丸を中心に同心円形に二の丸、三の丸を配する典型的な輪郭式縄張の城下町でした。

米沢城(=舞鶴城あるいは松岬城と称された平城)の特色として、本丸内に御殿、二つの三層の櫓の他に南東隅に藩祖謙信公の遺骸を祀る御堂が置かれ[現在の松が岬公園・上杉神社・稽照殿・招魂碑あたり]、この御堂に奉仕する真言宗の寺院二十一か寺[現在の上杉記念館・児童会館あたり]が二の丸に置かれたことがあげられます。二の丸には他に、世子御殿・城代屋敷・作事屋・うまや・蔵などの藩の施設が置かれました[現在の松岬神社・上杉城史苑あたり]

三の丸は、侍屋敷が置かれました。東側の門東町(上級家臣団の侍組屋敷・町奉行所・御用屋敷など)[現在の九里学園あたり]、南側(馬廻組=馬場町・南谷地小路など)、西側(五十騎組)、北側(与板組・中級家臣団屋敷など)と屋敷(屋敷地の奥行きは二十五間で短冊形に屋敷割され、裏の菜園では自家用の野菜などが栽培されました。)が置かれ、道路は南北・東西の碁盤目に区切られて、道路の中央あるいは片側に水路がめぐらされ上水に利用されていました。また加えて、筋違い・袋小路・クランク等の防御の工夫もされていました。

郭外の東側は、堀に沿って街道(山形・福島・会津)が取り込められて、通りの両側には町人町(大町・粡町・立町・東町・南町・柳町=この六町は本町とも呼ばれた)が張り付けられました。その外側には,職人町(免許町・銅屋町・鍛冶町・鉄砲屋町・紺屋町・新桶屋町など)ならびに馬口労町・東寺町・長町・北町が配され脇町と呼ばれました。

堀立川の西側には郭内に収容しきれなかった下級家臣団屋敷(新町一ノ町〜同四ノ町・北新町・南新町など)が置かれ、舘山地域(本来は別の城下)まで連なりました。

加えてさらに郊外の南原(南原五ケ町=石垣町・猪苗代町・笹野町・新町・横堀町、芳泉町=六十在家)・東原(山上通町・花沢八町)にも置かれ荒地の開拓と防衛にあたりました。そこに住む下級武士は原方衆と呼ばれる米沢藩特有のもので、屋敷裏や近辺の開墾が許された半士半農生活を送りました。

城下の武家屋敷が大正六年・八年の大火によりほとんど昔の面影を残していないのに対して、原方の町並みはとびとびではありますが、茅葺き屋根・ウコギの垣根・短冊状の町割も姿を留め、観光に訪れる人も増える中、歴史的な町並みの活用と保存が期待されています。


米沢藩の原方衆

三手組の中級武士も含まれたが、多くは禄の少ない扶持方から足軽までの下級武士でした。屋敷割は城下の侍町と同様に間口六間(七・八・ 十間間口が多い町もあります。)、奥行き二十五間の百五十坪を基準として、ほぼ直線の道路の両側に短冊状に区画されました。

住居は茅葺き屋根の中門造りでした。米沢の武家屋敷の特色の一つに茶の間に隣接する部屋を「割住居=わりずまい」と呼んだことです。また道路との境にはウコギの生垣が植えられ、トゲのある枝は防御の役目を果たし、また新芽は食用にされました。さらに屋敷地内には実のなる木々(柿・・胡桃・梅・花梨など)が植えられ食料自給の足しとされました。

原方は郊外の屯田集落でしたが、城下の武士と同様に役職につき城や役所に通勤し、また屋敷裏や荒地を開墾することが許され半士半農の生活をおくりました。田畑を耕すときも常に一刀を帯びていたという武士の誇りを持ちながら農作業にも励むことで、勤勉・粘り強い気風が培われました。 


昔の置賜地方の民家

当地方の民家は、養蚕や士族住居の影響により他地方に比べて一般に複雑であるといわれ全国的にもその特色が注目されていましたが、近年は生活の近代化にともなう住宅改善により昔の姿をとどめる民家は、そのほとんどがなくなり消滅寸前と言っても過言ではないかもしれません。

昔の民家は、
農山村: 馬屋中門、水屋中門
町場: 撞木(=しゅもく)造り
士族集落: 中門造り
というように、他地域の単純なつくりとは別に、複雑なL字状を呈しています。

中門

普通、母屋の下手側、つまり通常口の部分の表に突き出たものを言います。したがってその内部には出入り口・通路・馬屋・便所などのあるものを言います。中門は、本家・役柄の家・富豪農家などに多く見られ、下層農家などにはほとんど見られないという家格表示機能があったと言われます。

また中門は、構造の上からも多雪地帯や大規模農家地域に多く見られます。当地方に多い水屋中門は、水屋部分が突き出た造り、馬屋中門は、馬の出入り口および馬屋部分が突き出た造りをいいます。

撞木(=しゅもく)造り

人家の密集する街道沿いの町場では屋敷割が行われたために、街道に直角に棟の走る、つまり間口の狭い短冊状の敷地に家を建てる縦屋が生まれました。特に商家においては、店の部分は道路に平行する横屋で、居住部分は道路に垂直する縦屋のL字状またはT字状の造りでした。この造りを当地方では撞木造り・才槌(=サイヅチ)造りと呼んでいます。

切妻造り

切め・切りま・けごや造りなどと言います。屋根の面が棟をはさんで平側に傾斜しているもので、妻側には屋根はありません。米沢盆地では、明治・大正期に養蚕業の発展に伴って、切妻茅(かや)屋根の多層養蚕家屋の発達が見られました。また切妻は火災の後や分家する場合に負担が軽く容易に建てることができる屋根組でした。ただし、置賜地方の中でも強風地帯では、風上を寄棟に、風下を切妻にした民家が多く見られました。

片切妻造り

寄棟の片方の妻側が破風(切め)の造りで、切妻と寄棟の中間の屋根型。高畠町糠野目・白鷹町・長井市勧進代付近に見られました。

半切妻造り

袴腰=ハカマゴシ・カブト造りとも言われ、妻側の屋根を半ばから切り落とした形で明り採りができ屋根裏の中二階が寝間として、また養蚕期になると軒高の中ほどの所に、臨時に足場となる板を渡して根太天井のように仕組み、養蚕に利用されました。白鷹町横田尻や南陽市梨郷で見られました。

寄棟造り

屋根の面が建物の四面に向かって傾斜するもので、ヨツヤネと呼ばれることが多いです。モヤ型同様に、当地方の西部地域に分布しています。

入母屋造り

入母屋の三角の部分を「モヤ」と言い、モヤ造りとも言います。当地方では、その家の上手にモヤ(=破風口)を付けるのが普通で、養蚕時に二階や中二階の明り採りが主で、煙抜きにもなりました。モヤは網代型・格子型に細い木で組まれ、冬はこれをふさぐために、三角形の板・障子を用意しました。また、米沢市通町の集落では、道路側に並んで「きつねハフ」と言う煙抜きのための破風口の小さいモヤ造りが見られました。

煙出し(=破風, はふ)

囲炉裏で焚かれた薪の煙は破風の方へ上昇して外に逃げてゆく、換気の役割を果たしていました。とりわけ養蚕家では、カイコが繭を作り出すと、せっかくの白い繭が煤けてしまうので、この煙を嫌い多く(多いところでは六から八つ)の破風をつけました。当時のカイコの飼育において通風に力を注いでいたことが伺えます。

棟上部・妻上部・屋根腹部と多様な姿を見せ、棟にある煙出しは、やぐらハフ(トタン葺きが多い)・にぐらハフ・あげハフ・片ハフ(高畠町糠野目・川西町東部地区など)シコロハフ(米沢市万世・三沢地区)などと言われ、その中でも当置賜地方の特色として、茅葺きの小屋根をつけた腰高と呼ばれる重厚な感じのするハフを上げることができます。

囲炉裏(いろり)

部屋の中の炉をいう。昔は茶の間の中心でもあり、また一家の中心でもありました。置賜地方においては、ユルリ、ユロリ、ユリリと呼ばれることもあります。囲炉裏は、家族のだんらんの場として、また来客接待の場として使われ、煮焼き・暖房・採光などに機能的に使われました。囲炉裏には天井から自在鉤が吊るされ、さらに自在鉤の上に天井から太縄で「火棚」が吊るされて、濡れた衣類や藁靴など・栗や胡桃などの木の実やきのこ・青苧などを乾燥するのに用いられていました。またこの火棚には川魚を串に通して刺した「べんけい」と呼ばれるものが懸けられ、燻製の食べ物を作るのにも便利でした。火棚は、寒冷で積雪の多い地方の人々の冬の生活を少しでも快適に機能的に過ごす知恵から考え出されたものであると言えます。

各家庭では囲炉裏を囲んで座り,定座において役目を果たし、子供に家風を伝えたり、また大切な躾も、同時に自然に行なわれてきました。囲炉裏端でも子供は大人の手仕事のいくらかを手伝い、仲良く囲炉裏を囲み家族のまとまりを強くしていったことでしょう。そんな囲炉裏も、文化的な生活の変化にともない、私達の住生活から消え失せようとしているこの頃です。

雪囲い

当地方は県内でも屈指の多雪・豪雪地帯のため、家屋に直接かまたは少し離して雪囲いをする家が多いです。その方法には、

などがあります。

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