桐は収納を目的とした家具の素材(そざい)としては、まさに適切な材料といえるいくつかの特徴を備えていると言えます。
私たちの先祖たちは、長い間の経験によって桐の素晴らしい性質をよく知っていました。 桐材をよく使って来たのは、すぐれた生活の知恵からだと言えます。
手触りもやさしく、角などにもかたいささくれなどがないので、中に入れた物に傷を付けることもない。
いったん乾燥してしまえば、くるいや割れが少ない。特に柾目(まさめ)は、くるいが少ない。
それゆえに、桐ははじめから精密に作れて、抽斗(ひきだし)などもピッタリと作れる。
桐は,木工面を顕微鏡(けんびきょう)写真で見ると、例えてみれば、発砲(はっぽう)スチロールのような組織になっている。中が空気だらけであるために、熱が伝わりにくい。桐が古くから火鉢(ひばち)などの材料に使われているのも、この性質を利用してのことです。手で触れても熱くないからです。
吸湿・吸水性が悪いという性質もあることになります。これは、材木の組織にが水が吸いにくくなっているためです。
楠(くすのき)のように特殊な化学成分を持たないため、中に入れたものに作用して化学変化を起こさせるという心配はない。
桐材は、国産樹の中で最も成長が早い。
桐の産地では昔から、娘が生まれてきた時に桐の木を植えると、嫁に行くときに箪笥が作れると言われてきました。
やせた土地でも栽培ができるという長所は、木材資源としては頼もしい限りです。
桐のうちでも、会津、南部、新潟、山形、秋田などの寒冷地の、しかも畠の桐より山桐の方が良いとされている。
これは、材質が緻密で、軽く、年輪が細かく、春秋材の境目がはっきりしていて、光沢がよいことによる。