ヘプタフルバレンにおける擬Jahn-Teller効果のMCSCF法による解析 ○豊田 東雄 とよた あずまお 山形大教育 小関 史朗 こせき しろう 三重大工 非交互炭化水素に付随する特異な化学的性質は、擬Jahn-Teller効果の観点か ら興味が持たれ、理論・実験の両面から研究されてきた。 最近、私たちは共 役分子を対象にして、非対称平面構造の安定化の起源についてab initio RHF と MCSCF MO法を用いて検討した。 既知の非交互炭化水素の中で、ヘプタレ ンやヘプタフルバレンの分子構造は、非平面でしかも周辺炭素骨格に二重結合 が局在化していることがNMRスペクトルや X線結晶構造解析によって明らかに されている。 本研究では、擬Jahn-Teller効果の物理的描像を明らかにする ため、つまり、非平面構造の安定化の本質を考察するため、ヘプタフルバレン を取り上げ、平面構造から非平面構造への分子対称性の低下に寄与する因子を 解明する。 具体的には、平面な対称構造 (D2h)および非平面なD2 , C2v, そ してC2h構造の幾何学的なパラメーターをab initio MCSCF MO (6-31G(d)) 法 を用いて最適化し、それぞれの核配置における全エネルギーを、エネルギー分 割法に基づいて各成分に分割して解析する。