シュウィンガー・ダイソン形式による超重原子の理論 ○松浦 弘幸 まつうら ひろゆき 政策研究大学院大 中野 正博 なかの まさひろ 産業医科大 本論では、相対論的場の理論に基づいて、有限電子密度系を記述するAtomic Schwinger-Dyson(ASD)法を展開する。相対論的平均場近似が、電子を主として 解くのに対し、ASDの方法は、電子とフォトンを同等に取り扱う手法である。 このことにより、相対論的平均場近似を超えた高次相関を取り上げることが出 来る。この方法では、平均場は、古典場と見なされ、それを超えた量子論的振 動をフォトンのSelf-energyの形で取り上げる。フォトンのSelf-energyは、ま た、物質中でのフォトン伝播とも関連している。ASD法は、フォトンが物質中 を走る時に、particle-hole励起から受ける影響をフォトン伝播関数として表 現している。多電子系に、相対論的場の理論が必要な理由は、他にもある。例 えば、超重原子のような系では、陽電子生成が容易に起こり、真空からの電子 −陽電子対生成の効果を考慮しなくてはならない。この電子−陽電子対生成も、 ASD法ではフォトン伝播関数の中に取り入れることが出来る。フォトンの物質 中での伝播関数がfreeなものから変化すれば、当然それは電子の伝播関数にも 影響を及ぼす。こうして、フォトンと電子の互いに結合した一連の非摂動的方 程式が得られる。これがASD方程式である。以下にASD方程式の導出法の概略を 示す。