ナフタレン陽イオンを触媒とする水素分子生成反応 ○徃住 貴顕 とこすみ たかあき 静岡大理 萩原 紀子 はぎわら のりこ 静岡大理 寺田 典弘 てらだ よしひろ 静岡大理 石田 俊正 いしだ としまさ 静岡大工 相原 惇一 あいはら じゅんいち 静岡大理 極低温・高真空の宇宙では、2つの水素原子が出会っても容易に水素分子が生 成することはない。我々は数年来、宇宙に広く分布する多環式芳香族炭化水素 の陽イオンが触媒となって、2個の水素原子から水素分子が生成する可能性を 検討している。今回は、現実的な芳香族炭化水素分子としてナフタレンを選び、 その陽イオンラジカルの1位または2位に水素原子が付加し、それをもう1つ の水素原子が水素分子として引き抜く反応の経路を調べた。密度汎関数法を用 いた分子軌道計算によると、水素分子生成の段階で、小さな活性化エネルギー を伴う遷移状態が認められたが、零点振動の補正をすると消滅した。以前に、 ベンゼン陽イオンを触媒として活性化エネルギーなしに水素分子が生成するこ とを見出しており、この種の反応は、宇宙における水素分子生成反応の有力な 候補であると考えられる。中性の芳香族炭化水素を触媒とする反応では活性化 エネルギーを必要とする。