J 02 tDNAの系統的検出 工藤 喜弘 くどう よしひろ 山形大工 金谷 重彦 かなや しげひこ 山形大工 ○木ノ内 誠 きのうち まこと 山形大工 バクテリアを古細菌(A)、グラム陰性菌(N)、グラム陽性菌(P)、マイコプラズ マ(M)という四つのクラスに分類したとき、それぞれのクラスに特有のtDNA並 びがあるように見えることを利用して新しいtDNAを確立した。これにより、 tDNAとしてのクローバ葉構造を形成する塩基配列を探すのにDNA 塩基配列全体 ではなく、ある見つかったtDNA を手掛かりにその上流、下流のみに絞ること に成功した。かくてたまたま見つかったtDNAか既存のtDNAを手掛かりに、まず それがあるバクテリアの種類を調べ、そこでみつかって手掛かりtDNAを含んで いるものを引き出し、そのデータを参考に上流、下流に見つかる期待が大きい tDNA配列をさがす。 J 03 ヒトゲノムのエキソンとイントロンの識別 工藤 喜弘 くどう よしひろ 山形大工 金谷 重彦 かなや しげひこ 山形大工 木ノ内 誠 きのうち まこと 山形大工 ○坂井 孝光 さかい たかみつ 山形大院工 mRNAのスプライシングはエキソンとイントロンの境界を中心にした数塩基配列 に特徴があるとされており、イントロンがGTで始まりAGで終わるGT−AG則は最 も有名であるが、DDBJのHomo sapiensのDNAデータ78425件に対して、実際に機 能し構造が明確に記述されている451 5件のDNAデータの報告事例についてのイ ントロン5796件のうち、GT−AG則に従わないすなわち、GT−AG則以外の規則で 説明すべきイントロンは162件見つかった。このうち109件はGT−AG則のい適用 も可能であること、残りのうち22件はGCーAG則に従うと考えればよいというこ と、などがわかったが、最後の31件にはそれ以外の規則を見つける必要があり そうであるという結論を得た。 J 04 情報化学システムCGSの開発(8)化学反応速度論的微分方程式系の符号化と速度論的シミュレータ ○内野 正弘 ウチノ マサヒロ 日本情報化学システムズ 学反応速度論的微分方程式系の符号化は、化学反応速度論的微分方程式系に関 する知見の整理とデータベース化、並びに化学反応系のシミュレータの構築な どにとって極めて重要である。微分方程式系、通常の化学者表現、グラフ表現、 数値計算システム、化学的作業仮説としての簡単化、 速度論的データ解析な どを総合的に取り扱う理論とシステムについて報告する。 J 05 JCICSの分析を中心とした情報化学の計量文献学的研究 ○小野寺 夏生 おのでら なつお 図書館情報大 文献データベースを用いて、情報化学分野の論文を計量文献学的に分析した。 まず、Chemical Abstracts (CA)における情報化学に関するSubsectionに収録 された記事の掲載雑誌分布を、過去30年にわたり調査した。その結果、全期間 を通してJournal of Chemical Information and Computer Science (JCICS)の シェアが他誌に比べ圧倒的に高いことが判ったので、JCICSの記事を中心に分 析を行った。CAを用いて、JCICSの記事に多く付与された分類(Subsections)と 統制キーワード(General Subject Index Terms)が、時代とともにどう変遷し ているかを分析した。また、発表数の多い著者とその所属機関も調べた。次に、 Science Citation Index (SCISEARCH)を用いて、JCICSの掲載記事がよく引用 している雑誌、逆にJCICSの記事をよく引用している雑誌を調査した。この結 果から、情報化学研究における相互依存関係を考察した。 J 06 JSTにおける高分子データベースの開発 −IUPAC構造基礎名の自動発生 Phase1− 飯室 茂 イイムロ シゲル 科技団研究基盤情報部 ○前田 知子 マエダ チカコ 科技団研究基盤情報部 高枝 佳男 タカエダ ヨシオ 三菱総研 長阪匡介 ナガサカ キョウスケ 三菱総研 IUPAC高分子命名法に準拠した構造基礎名を構成繰り返し単位の化学構造に基 づいて自動発生させる機能を、一部の線状ホモポリマーを対象として開発した ので報告する。(1)IUPAC高分子命名法および有機化学命名法を高分子名称自動 発生という観点から検討し、(2)名称自動発生用の命名規則を作成した上で、 (3)名称発生用アルゴリズムを検討、これに基づいてプログラムを作成した。 特に命名の副単位となる部分構造の認定方法、名称配列のための優先順位の適 用や慣用的名称をどの程度許容するか、などが検討課題となった。当機能は JST高分子データベースが持つ高分子用の化合物レジストリシステム(高分子辞 書)の一部として開発中であるが、将来はインターネット上でデータベース利 用者にも公開する予定。なお、JSTの高分子データベースは、プロトタイプ システムを無料提供中(http://kronos.tokyo.jst.go.jp:8085)。 J 07 マイクロソフトACCESS上の質量スペクトルデ―タベ―スII 六車 裕孝 ろくしゃ ひろたか 日本アステック 仲久保 正人 なかくぼ まさと 筑波研究学園専門学校 ○前田 浩五郎 まえだ こうごろう アイエヌジェイ この処のOSのめまぐるしい変遷に対応する為と、既存のソフト資産の継用の 為、同一ハ―ドシステム内に複数OSの共存可能なシステム実現に就いては既 に報告した(熊本)。しかしその後Windowsの優位は動かず、その上での ACCESSがケミスト達にとってデ―タベ―ス操作のユウティリティとして身近な ものになる兆しが見えて来た。 これに対処する為、先般来我々はNISTの約4万 化合物の質量スペクトルデ―タべ―スをこのシステム内に移し、その操作可能 性、実用性を吟味して来た。 その結果、分子量、化学式、化合物名、ベ―ス ピ―ク等の単独のパラメ―タでの検索は全て1〜2秒で、またそれらの複数の組 合わせでも同様に1〜2秒、更に化合物名では部分構造名のAND、OR組み合わせ が可能で、結果表示等も含めて充分実用性の有る事が判った。 現在更に性能 向上を含めて鋭意努力中。 諸彦よりの助言を得たい。 J 08 化学物質のリスクアセスメントシステムの開発 ○花井 荘輔 はない そうすけ 日本化学工業協会 事業者が化学物質のリスクを評価するためのツールとしての評価システムを開 発した.システムは,フィジカルリスク(爆発燃焼等),ヒト健康影響リスク, 生態影響リスクを評価するそれぞれのサブシステムと,必要なら新しいリスク 管理手法を検討・評価・選択するサブシステムを含む.リスクアセスメントに とって重要な暴露量評価には,作業者・消費者に対する直接暴露を評価する数 理モデル式と周辺・一般住民あるいは環境への間接暴露を評価するモデル式を 用意した.化学物質のリスクアセスメントは,化学物質の安全性・物理化学性・ ヒトの行動パターン・気象・水文・物質管理等に関する多種多様の情報を必要 とするものであり,データの検索・推算およびモデルによる動態シミュレーショ ン等,化学情報システムの問題としても興味深い問題である.講演では,この 点を強調し,今後当部会員がこの分野に積極的に関心を持ってくれることを訴 えたい. J 09 インターネット上の反応データベースシステム -3- ○中山 堯 なかやま たかし 神奈川大理 上野山 敦史 うえのやま あつし 神奈川大理 兼子 崇 かねこ たかし 神奈川大理 柳沢 一博 やなぎさわ かずひろ 神奈川大理 分子設計研究会の反応設計分科会において独自に構築して来た反応データベー スの規模が,データ数にして6万件と一応の実用レベルに到達したので,その 検索システムをインターネット上のクライアントサーバシステムとして開発し, 一般に公開中である. 公開法は, クライアントシステムをCD-Rにコピーして希 望者に配布する方式である.現在はユーザ認承は行っていない.ただし, バグ レポートや反応データの提供など本システムの運用に対して何らかの貢献をす る事を期待している. 1999年7月から2年間はこの形態である。また, これまで 構造検索のみであったが, テキスト検索の機能を実装中である. 本データベー スは,反応データ自体と反応データの表現が独自のものであり,他のデータベー スに含まれていないデータや情報を有するという特徴を有している.さらに, 本データベースをインターネットを介して更新(追加・修正)する機能を実装中 である.更新についてはデータの信頼性を確保する上で考慮すべき事が多々あ るので,実験を重ねながら実用システムとして実現するためのノウハウを蓄積 する計画である.本システムは実用システムであって, 多くのユーザに使用し ていただいて関心を持っていただき, 反応データの提供ユーザが増加する事に よって, 本データベースが質的量的に充実して行く事を期待しているものであ る. J 10 インターネットにおけるSDBS−NMR ○早水 紀久子 はやみず きくこ 物質研 矢部 篤子 やべ あつこ 物質研 柳沢 勝 やなぎさわ まさる 物質研 SDBSは全面公開してから約2年の歳月がたったが、その間に合計300 万件以上のアクセスを得ている。アクセス数には季節変動があるが、全体とし て増加の傾向は顕著にある。地域別の統計から、我が国のアクセス増加率は低 く”インターネット上で情報を取得する”思想に問題があることが推測される。 システムについては種々の改良を行っているがNMRとMSではスペクトル 検索ができるようにした。検索サービスについての方針と実際を報告する。ま たNMRではスペクトル帰属をつけた化学構造式を公開しているが、ユーザか ら帰属についての種々のコメントがきており、それに対する我々の対応につい て報告したい。ホームページは www.aist.go.jp/RIODB/SDBS/ である。 J 12 光合成反応中心における電子移動に関する理論的研究 ○北尾 修 きたお おさむ 物質研 青木 孝造 あおき こうぞう 物質研 建部 修見 たてべ おさむ 電総研 関口 智嗣 せきぐち さとし 電総所 植物は太陽光エネルギーを非常に効率よく化学エネルギーに変換しており、そ の初期過程は「光合成反応中心」において太陽光により生じた電子を決まった 経路に沿って決まった方向に高速で運ぶ反応であり、この電子移動は光合成反 応中心を構成する蛋白質が支配していると考えられている。我々は、理論化学・ 計算化学の手法で、その機構を解明する。 J 13 TS-1/H2O2/PhOH酸化反応活性種生成におよぼす溶媒構造の効果 ○後口 隆 あとぐち たかし 宇部興産 八尾 滋 やお しげる 宇部興産 概要「Tiを格子内に含むゼオライト(TS-1)を触媒として用いると、フェノール (PhOH)酸化反応において生成するハイドロキノン(HQ)とカテコール(CL)の生成 比およびPhOH転化率が溶媒により変化する。この溶媒の効果は、単に比誘電率 によるものではないことが、実験的に確認されている。我々は各種溶媒を用い た実験とともに、想定される反応機構中間体に対する密度汎関数法による検討 を行っている。先の計算化学討論会では水およびメタノールが、Ti活性中心へ の過酸化水素(H2O2)分子の吸着を安定化することを報告した。今回は、さらに アルコールの構造を変化させ、エタノール、イソプロパノールとしたところ、 H2O2吸着はメタノール>エタノール>イソプロパノールの順に安定であることが わかった。この結果をもとに、実験による検討を行ったところ、HQ/CL比はほ ぼ一定のまま、PhOH転化率は吸着安定化の順と同じくメタノール>エタノール> イソプロパノールの順となった。このことはH2O2のTi活性中心への吸着が全体 の反応速度に影響を及ぼしており、その構造を安定化する溶媒がより効果的で あることを示唆している。計算および実験の詳細に関しては当日報告する」 J 14 ケミカル・ハードネスを用いた電荷移動を伴う分子シミュレーション手法の検討 ○高田 章 たかだ あきら 旭硝子 従来の分子動力学手法は固定電荷を用いるため構成原子の割合や構造が大きく 変わったり、結合の解離や反応が起こるような、すなわち大きな電荷移動が伴 う場合には適用限界がある。この問題に対する処方箋の一つとして、ケミカル ポテンシャルが釣り合うように電荷の移動を許すモデル化が最近提案されてい る。しかしながら安定構造での議論がほとんどであり、モデルのパラメータは 特定の状態について決められるため、大きく歪んだ構造や解離する場合には精 度が悪いと考えられる。本研究ではab initio法による電荷とエネルギーの解 析結果をもとに安定構造から解離する場合まで応用できるような手法を検討す る。解析対象としては水分子を選んだ。今回の検討結果により、原子種ごとに 電気陰性度やケミカルハードネスを決定するだけでは不十分であり、結合状態 等の環境の影響も取り込んだモデルが必要であることがわかった。 J 15 QM/MM-vib 法に基づいたab initio MD 法の開発と水溶液内反応への応用 ○相田 美砂子 あいだ みさこ 広島大院理 山高 博 やまたか ひろし 大阪大産業科学研 Michel DUPUIS ミッシェル デュピュイ Pacific Northwest National Lab. 化学反応をシミュレートするためには、経験的なポテンシャル関数を使用しな いで分子動力学法計算の各時間ステップにおいて非経験的分子軌道法計算を実 行することが必要である。私達は、絶対零度ではないある温度において運動エ ネルギーを持った状態において化学反応がどのように進行していくのかについ て理解を深めることを目的として、この手法を発展させてきた。溶液内反応に おいては溶媒分子が重要な役割を果たしている場合が多い。しかし量子化学的 取り扱いをすべての溶媒分子に対して行うことはできない。そこで反応に直接 関与している溶質および溶媒分子を QM 的に取り扱い、その周辺の多数の溶媒 分子を MM 的に考慮に入れた分子動力学法計算を行う手法を発展させている。 MM 部分には分子の構造および分極による影響を表現するポテンシャルを組み 込んだ。 J 16 ナフタレン陽イオンを触媒とする水素分子生成反応 ○徃住 貴顕 とこすみ たかあき 静岡大理 萩原 紀子 はぎわら のりこ 静岡大理 寺田 典弘 てらだ よしひろ 静岡大理 石田 俊正 いしだ としまさ 静岡大工 相原 惇一 あいはら じゅんいち 静岡大理 極低温・高真空の宇宙では、2つの水素原子が出会っても容易に水素分子が生 成することはない。我々は数年来、宇宙に広く分布する多環式芳香族炭化水素 の陽イオンが触媒となって、2個の水素原子から水素分子が生成する可能性を 検討している。今回は、現実的な芳香族炭化水素分子としてナフタレンを選び、 その陽イオンラジカルの1位または2位に水素原子が付加し、それをもう1つ の水素原子が水素分子として引き抜く反応の経路を調べた。密度汎関数法を用 いた分子軌道計算によると、水素分子生成の段階で、小さな活性化エネルギー を伴う遷移状態が認められたが、零点振動の補正をすると消滅した。以前に、 ベンゼン陽イオンを触媒として活性化エネルギーなしに水素分子が生成するこ とを見出しており、この種の反応は、宇宙における水素分子生成反応の有力な 候補であると考えられる。中性の芳香族炭化水素を触媒とする反応では活性化 エネルギーを必要とする。 J 17 リチウム含有遷移金属酸化物の構造特性と電子状態に関する計算化学的検討 ○鈴木 研 すずき けん 東北大院工 小野津 崇之 おのづ たかゆき 東北大院工 高見 誠一 たかみ せいいち 東北大院工 久保 百司 くぼ ももじ 東北大院工 宮本 明 みやもと あきら 東北大院工 LiCoO2やLiNiO2をはじめとするリチウム含有遷移金属酸化物は、近年リチウム 二次電池の正極活物質として注目を集めている。さらに最近ではLiNiO2がメタ ンの酸化カップリング反応に対し、高い活性を持つことが確認されている。そ こで本研究ではMD法や量子化学計算といった計算化学的手法を駆使し、層状リ チウム金属複合酸化物(LiCoO2、LiNiO2)の構造特性や電子状態の検討を行っ た。LiNiO2の電子状態と構造の関係を密度汎関数法により検討を行ったところ、 計算により得られた酸素とニッケルの八面体構造は長短二種のNi-O距離をもつ 構造であった。長い部分で2.12Å、短い部分では1.93Åとなり、長短のNi-O距 離で約0.2Åほど差のある歪んだ4+2構造であった。これはLiNiO2中のNiの電子 配置は低スピン状態のNi3+であり、t2g軌道よりエネルギー準位の高いσ型の 反結合性軌道であるeg軌道に一つ電子が入るため、電子格子相互作用に基づく 構造不安定性(ヤーン・テーラー効果)をもつためと考えられる。 J 18 ダイヤモンド膜の表面反応に関する計算化学的検討 ○田村宏之 たむら ひろゆき 東北大院工 周 慧 しゅう けい 東北大院工 高見 誠一 たかみ せいいち 東北大院工 久保 百司 くぼ ももじ 東北大院工 宮本 明 みやもと あきら 東北大院工 蒲生西谷 美香 がもうにしたに みか 無機材研 安藤 寿浩 あんどう よしひろ 無機材研 ダイヤモンドやc-BNは耐摩耗性の高い硬質膜として注目されている。ダイヤモ ンド薄膜はCVDによって形成されるが、表面の平滑化を高めるために、その構 造および化学反応の機構に興味がもたれている。また、不純物をドープするこ とによる半導体としての特性、およびドーピングのメカニズムに関心が集まっ ている。本研究では、ダイヤモンド表面の構造と水素および酸素との反応機構、 および不純物のドーピングのメカニズムを量子化学計算で検討した。 J 19 量子分子動力学プログラム'colors'の開殻系への拡張 ○高見 誠一 たかみ せいいち 東北大院工 山田 有場 やまだ あるば 東北大院工 田村 宏之 たむら ひろゆき 東北大院工 久保 百司 くぼも もじ 東北大院工 宮本 明 みやもと あきら 東北大院工 今村 詮 いまむら あきら 広島国際学院大工 我々は従来の第一原理分子動力学法に比べより高速な、量子分子動力学プログ ラム'colors'を開発してきた。このプログラムは、拡張Huckel近似に基礎を置 き、分子動力学の1ステップごとに電子状態を解いて原子間にはたらく力を算 出するので、計算は高速でありかつ電子の授受を伴う反応も正確に記述できる という特徴を持つ。これまでのプログラムは閉殻系のみに適用できるものであっ たが、化学反応を記述する際には、反応性の高い化学種である、ラジカル種を 考慮することが必須であるため、本講演ではプログラムの開殻系への拡張を試 みた結果について報告する。開殻系を考慮するため、拡張Huckel近似における αとβ電子のクーロン積分の差を、開殻系でのFock演算子のαとβ電子の差に 相当するエネルギーに等しいとおいた。発表では本プログラムをさまざまな反 応系について適用し、その有効性を評価した結果について紹介する。 J 20 ケモメトリックスが拓く設計・予測の世界 ○船津 公人 ふなつ きみと 豊橋技科大 ケモメトリックス手法は、実験や計算を通して得られる情報から、設計・予測 のためのモデル構築する一般的な方法として定着し始めている。材料設計、分 子設計のために、ケモメトリックス手法がどのような使われ方をされているの かを実例を通して解説する。 J 21 3次元的分子数値化法FRAUの特性値を識別子とした試薬の自動分類と機能予測 ○佐藤 寛子 さとう ひろこ 科技団さきがけ研究21 船津 公人 ふなつ きみと 豊橋技科大 鷹野 景子 たかの けいこ お茶大 中田 忠 なかた ただし 理研 コンピュータによる定量的反応予測のための知識・規則誘導の最初のステップ として自動反応分類研究を進めている.分類識別子となる特性値計算法として 開発したFRAU は,仮想反応相手との静電的・立体的相互作用に基づいて3次 元的に分子を特性値化する.今回は,FRAUによる特性値をもとに試薬の自動分 類と機能予測を行なった.FRAUは各原子毎に特性値を与えるが,自動分類のた めには種々の分子を同じ次元数で比較・分類する必要がある.そこでまず種々 の試薬分子について計算したFRAU特性値のうち,試薬分子の構造と役割の類似 と相違をよく識別する特性値の組み合わせで,その分子を代表させる方法を検 討し,良好な結果を得た.つぎにこれら特性値の組合わせをデータセットとし, 試薬分子をKohonenニューラルネットワークで分類した.本分類結果をもとに, さらに試薬−機能相関マップを自動作成した.本相関マップにより,マップの 作成に用いた分子と用いなかった分子のいずれについても適切な分類・機能予 測結果を得た. J 22 ニューラルネットワークによる化学物質の安全性の予測 ○田辺 和俊 たなべ かずとし 物質研 松本 高利 まつもと たかとし 物質研 化学物質の構造から安全性(毒性、生分解性)を迅速に予測する手法を開発する ためにニューラルネットワークを用いる手法を検討した。3層構造のニューラ ルネットワークを用い、入力層には化学構造記述子として結合の数のみを入力 し、出力層には毒性、生分解性の実測値を教師データとして入力して、 back-propagation法でニューラルネットワークの学習を行った。 leave-one-out testを行った結果、80%以上の的中率がえられ、既存の予測シ ステムよりも高い的中率で毒性、生分解性を予測する手法を開発することがで きた。 J 23 X線回折を用いた地下岩石情報の可視化 ○貝原 巳樹雄 かいはら みきお 一関高専 大岡 靖典 おおおか やすのり 一関高専 金田 英伯 かねた ひでのり 帝国石油 原油・天然ガスなどの地下資源を探索する方法中で最も一般的かつ普遍的なも のは、地下岩石試料の孔隙率/浸透率などの物性値情報や元素組成・鉱物組成 等の化学的情報を得ることである。しかし、岩石試料の分析値を求めるには、 非常に労力がかかり、また、その費やした労力の割には得られる情報が少ない ためか、これまでその手法について、またその結果の積極的な活用例は少ない。 そこで、我々はX線回折データの活用を目的とした本研究を行うこととした。 具体的には、南長岡ガス田のグリーンタフ貯留層を主にその対象として、XR Dのピーク面積値から鉱物組成に関する化学的情報を得て、従来の地層区分と の比較を行うこととした。本研究では、特に化学情報の視覚的な表現方法につ いて検討し、直感的にわかり易い、深さ方向の地層イメージを色相表示する方 法(化学成分層、ケミカルレイヤー)を考案した。 J 24 有機電子論の数学的裏付けとその限界 ○細矢 治夫 ほそや はるお お茶大理 Robinson や Ingold が1920年代に提出したいわゆる有機電子論を使うと、不 飽和共役系の中のπ電子の移動の範囲と度合いがかなり正しく予測できる。簡 単な分子軌道法の計算もこれらの結果を多くの場合に再現することが知られて いる。従って現代の有機化学者も、反応の予想や反応機構の説明にこれを作業 仮説として活用している。著者は最近、Coulsonと Longuet- Higgins の摂動 論にグラフ理論を組合せることによって、この有機電子論の数学的な裏付けに 成功した(JMS,461-462,473(1999))。また、福井の superdelocalizability やCoulson 等の分極率等が、簡単な共役系で発散することも見出した (Theor.Chem.Acc.,102,293(1999))。更に、大きなベンゼン系炭化水素にお いて、異常なトンネル電子移動の起こることも見出した。これらの最近の発見 と現在解析を進めていることをもとに、表記の問題についての話題をいくつか 提供し、討論を行いたい。 J 25 シュウィンガー・ダイソン形式による超重原子の理論 ○松浦 弘幸 まつうら ひろゆき 政策研究大学院大 中野 正博 なかの まさひろ 産業医科大 本論では、相対論的場の理論に基づいて、有限電子密度系を記述するAtomic Schwinger-Dyson(ASD)法を展開する。相対論的平均場近似が、電子を主として 解くのに対し、ASDの方法は、電子とフォトンを同等に取り扱う手法である。 このことにより、相対論的平均場近似を超えた高次相関を取り上げることが出 来る。この方法では、平均場は、古典場と見なされ、それを超えた量子論的振 動をフォトンのSelf-energyの形で取り上げる。フォトンのSelf-energyは、ま た、物質中でのフォトン伝播とも関連している。ASD法は、フォトンが物質中 を走る時に、particle-hole励起から受ける影響をフォトン伝播関数として表 現している。多電子系に、相対論的場の理論が必要な理由は、他にもある。例 えば、超重原子のような系では、陽電子生成が容易に起こり、真空からの電子 −陽電子対生成の効果を考慮しなくてはならない。この電子−陽電子対生成も、 ASD法ではフォトン伝播関数の中に取り入れることが出来る。フォトンの物質 中での伝播関数がfreeなものから変化すれば、当然それは電子の伝播関数にも 影響を及ぼす。こうして、フォトンと電子の互いに結合した一連の非摂動的方 程式が得られる。これがASD方程式である。以下にASD方程式の導出法の概略を 示す。 J 26 分子力学法と分子動力学法による長鎖脂肪酸単分子膜の研究 ○橋口 聡 はしぐち あきら 大阪電通大 藤田 岩男 ふじた いわお 大阪電通大 これまで飽和脂肪酸単分子膜については、アルキル鎖の傾きなど分子配向につ いての計算が多く行われてきたが、不飽和脂肪酸についての計算はほとんど行 われていない。不飽和脂肪酸の分子配置や傾き等の関係を明らかにするために 我々は分子力学法(MM)と独立原子モデルを用いた分子動力学法(MD)の2種類の シミュレーションを用いた。力場は既存の力場のMM2力場を用い、比較検討の ために飽和脂肪酸についても計算した。計算の結果は,飽和脂肪酸は占有面積 を増加させたとき,分子の傾きが,ある占有面積のところで急激に増加した。 この占有面積は,実験におけるπ-A曲線の折れ曲がり位置とほぼ対応する。ま た、不飽和脂肪酸は、trans-体では飽和脂肪酸と同様の特徴が得られたが、 cis-体では、非常に秩序の低い結果となった。 J 27 ProteinDF によるタンパク質全電子計算と電子トンネリング過程 ○佐藤 文俊 さとう ふみとし 九工大情報工 吉廣 保 よしひろ たもつ 九工大情報工 岡崎 功 おかざき いさお 九工大情報工 上田 尚学 うえだ たかあき 九工大情報工 保田 慎一郎 やすだ しんいちろう 九工大情報工 恵良 信 えら まこと 九工大情報工 時枝 浩司 ときえだ こうじ 九工大情報工 佐藤 洋子 さとう ようこ 九工大情報工 柏木 浩 かしわぎ ひろし 九工大情報工 本発表者らが独自に開発した Gauss 型基底関数による密度汎関数法 プログラム(ProteinDF)を用いてタンパク質の全電子計算を実行し た。現在、43 残基のタンパク質の計算が終了した。これはトップク ラスの大規模計算である。発表ではさらに大型の計算結果について 報告するとともに、タンパク質内電子移動のシミュレーションにつ いても発表する。 J 28 酸化物エレクトロニクス材料のハイオーダーエピタキシー機構の解明 ○久保 百司 くぼ ももじ 東北大院工 稲葉 祐策 いなばゆうさく 東北大院工 小野津 崇之 おのづたかゆき 東北大院工 高見 誠一 たかみせいいち 東北大院工 宮本 明 みやもとあきら 東北大院工 川崎 雅司 かわさきまさし 東工大院総合理工 吉本 護 よしもとまもる 東工大応セラ研 鯉沼 秀臣 こいぬまひでおみ 科技団戦略研、東工大応セラ研 酸化物エレクトロニクス材料の合成過程をシミュレーションすることが可能な 分子動力学計算プログラムMOMODYを開発し、酸化物薄膜のエピタキシー成長過 程の検討を行った。MgO(001)表面上にMgO薄膜を形成した場合には(001)配向の 2次元エピタキシャル成長が確認されたのに対し、サファイア(0001)面上に同 じくMgO薄膜を形成した場合には3次元ナノドット構造の形成が予測された。 また、このナノドットがアモルファス状ではなく結晶構造を維持しており (111)配向でエピタキシャルに成長することも明らかとなった。さらにサファ イア(0001)面とMgO(111)面の格子定数比は約8.4%もあることからMgO/サファ イア(0001)界面でこの大きな格子定数比を緩和するハイオーダーエピタキシー 現象が起こっているものと考えられる。そこで、この形成機構について検討し たところ、MgO/サファイア(0001)界面のAl原子が4〜5配位のいフレキシブ ルな配位数をとることで、ハイオーダーエピタキシーが実現されていることが 明らかとなった。 J 29 シリコン酸化膜における応力特性の計算化学的検討 ○山田 有場 やまだ あるば 東北大院工 黒川 仁 くろかわ ひとし 東北大院工 遠藤 明 えんどう あきら 東北大院工 高見 誠一 たかみ せいいち 東北大院工 久保 百司 くぼ ももじ 東北大院工 宮本 明 みやもと あきら 東北大院工 シリコンデバイスの微細化、高集積化に伴い、ゲート絶縁膜の薄膜化が進行し 高品質な極薄絶縁膜の必要性が課せられている。近年、酸化層薄膜の微小表面 応力の測定により、プラズマ酸化過程の極初期には引っ張り応力と圧縮応力が 繰り返し観測された。そこで本研究では、酸化膜成長過程の応力変化を解明す るために、分子力学(MM)計算を行なった。MM計算にはMSI社の開発したCerius2 を用いた。Si(100)清浄表面に1〜9層の酸化膜を形成し最安定構造を求めた。 また、ステップを考慮したモデルについても検討を行なった。ポテンシャルは Universalポテンシャルを用いた。周期境界条件の単位セルは、表面方向のみ 緩和させた。スーパーセルのb軸(ダイマーに平行)とc軸(ダイマーに垂直)の変 化から応力が異方性を持つ事が確認できる。またb軸とc軸の和の変化から始め に引っ張り応力、次に圧縮応力が確認された。 J 30 サファイア基板上におけるGaN薄膜初期成長の計算化学的検討 ○小野津 崇之 おのづ たかゆき 東北大院工 稲葉 祐策 いなば ゆうさく 東北大院工 高見 誠一 たかみ せいいち 東北大院工 久保 百司 くぼも もじ 東北大院工 宮本 明 みやもと あきら 東北大院工 家近 泰 いえちか やすし 住友化学 前田 尚良 まえだ たかよし 住友化学 III-V族窒化物半導体であるGaNは、高出力の青色LEDが実現されており、室温 での短波長レーザー発振の実現などから、次世代のDVD用光源としても期待さ れている。しかしながら、その製膜過程で結晶性に影響を与えている薄膜/基 板界面での微細構造についてはまだ十分な理解は得られていない。そこで本研 究では、分子動力学(MD)法と密度汎関数法を用いて、サファイア基板上のGaN の結晶成長過程に影響を与えている、ヘテロ界面の微細構造について計算化学 的な観点から検討した。MD計算の結果より、N原子はAl原子と強く相互作用し、 それほど大きく拡散しなかったが、Ga原子は基板表面を均一に拡散する傾向が 見られた。このことより、界面ではAl-N結合が支配的であると考えられる。さ らに、低温でGaN層を結晶成長させ、高温でアニーリングすることによって、 GaN表面の結晶方位がどのような影響を受けるかについても検討した。 JP 01 情報化学システムCGSの開発(9)正規4次グラフの生成、符号化、対称性認識およびデータベースの構築について ○内野 正弘 ウチノ マサヒロ 日本情報化学システムズ 2000万個以上の正規4次グラフの生成、符号化、対称性の認識をおこなった結 果について、報告する。節点等価クラス、全等価節点よりなる構造、節点照明 関数のResolution,節点数とグラフ数の関係、データベース化する際に必要な 媒体容量などについて報告する。 JP 02 二節部分グラフによるIUPAC名の生成 ○安代 容子 あじろ ようこ 京都工芸繊維大院工芸 藤田 眞作 ふじた しんさく 京都工芸繊維大院工芸 本研究の最終目標は、ITS(虚遷移構造)に基づく反応検索システムの構築であ る。このシステムでは、ITS結合表から抽出した二節部分グラフを用いること により、反応物、生成物および反応過程に注目して検索を進めることができる。 本研究は、この検索システムのサブシステムとして一般の化学反応にIUPAC反 応名を付与する方法の確立を目的とした。まず、あらかじめ反応名がわかって いる化学反応を各基本反応グループに分類し、基本反応のITSからグループ固 有の二節部分グラフを決定するプログラムを作成した。次に、このようにして 得た基本反応のデータと反応名未知の反応から得た二節部分グラフとを照合す ることにより、IUPAC反応名を付与するプログラムを作成した。その結果、二 節部分グラフを用いて一般反応を分類、検索する方法の妥当性と、その限界を 明らかにした。 JP 03 XyMML (XyM Markup Language)---構造式のコミュニケーションのためのマーク アップ言語 ○藤田 眞作 ふじた しんさく 京都工芸繊維大工芸 インターネットや電子出版の普及にともなって、化学文書の流通があらためて 問題になっている。とくに、構造式のコミュニケーションに関しては、まだ主 流になるものは提案されていない。筆者は、すでに構造式のタイプセッティン グシステムとしてXyMTeXを公開しているが、この命令体系をさらに拡張して、 XyM記法(XyM Notation)を提案している。今回は、次期のネットワーク言語と 目されているXMLに適用することを念頭において、構造式のコミュニケーショ ンのためのマークアップ言語として、XyM Markup Language (XyMML) を提案す る。さらに、SGML用のDTDおよびLaTeXトランスレーター用のフィルタープログ ラムを作成し、XyMMLから出発して、版下用のプリントアウトを行うシステム を作成したのであわせて報告する。 JP 04 有機合成設計システムAIPHOSにおける戦略部位の優先順位付け手法の開発 ○田中 章夫 たなか あきお 住友化学工業 船津 公人 ふなつ きみと 豊橋技科大 本発表では、LHASA以降の多くのシステムの課題であるルートの拡散化を解 消すべく、われわれがこれまで開発してきた知識指向型合成設計プログラム AIPHOS(Artificial Intelligence for Plannning and Handling Organic Synthesis)についてターゲットや中間体から認識した戦略部位の優先順位付 けについて検討した結果について述べる。 ルートの拡散化(1ステップで10通りの提案を行うと、5ステップでのルー ト総数が原理的には10の5乗となる状況)については、今日まで、解消する ための有効な手法があまり開発されていなかった。そこで、今回我々は標的化 合物や中間体から認識した戦略部位の優先順位付けについて検討した。客観的、 定量的に取り扱うために、既存の反応データベースからの評価式の誘導を検討 した。具体的には、反応データベースの生成系の構造全体と、優先順位付けの 対象となる戦略部位をパラメータ化し、統計解析したものを評価式とした。こ こから得られた各戦略部位の評価値で、有用なルートから提案する可能性を示 すことが出来た。(戦略部位:合成前駆体構造を導く際の標的構造中の着目部 位) JP 05 有機合成設計システムAIPHOS-KOSPの開発(2) ○佐藤 耕司 さとう こうじ 第一製薬 船津 公人 ふなつ きみと 豊橋技科大 合成設計システムKOSP(Knowledge base Oriented system for Synthesis Planning)は市販反応データベースより自動誘導された知識ベースを利用した 新しいタイプの経験型システムである.昨年の情報化学討論会において,その 開発コンセプトおよび動作概要を報告したが,一段階の逆合成ルート提案しか 行なえなかった.今回,convergent synthesisの概念をシステムに導入し,多 段階逆合成ルート提案を可能としたので報告する.また,GUIも向上させたの で併せて報告を行なう. JP 06 化学物質生体影響データベース ○志村 和樹 しむら かずき 科技団 科学技術振興事業団(JST)では、これまでJSTが蓄積してきた化合物 辞書、熱物性、質量スペクトル、結晶構造といった基礎的化合物データと、国 立医薬品食品衛生研究所、国立環境研究所、工業技術院生命工学工業技術研究 所、理化学研究所のデータベースとをインターネット上で結びつけたネットワー ク分散型化合物データベースの実験システムを開発し公開を開始した。それぞ れのデータベースは各機関で独自に開発されているものであるが、化学物質の 生体影響に関する研究等の多面的なデータ検索のニーズに対応できるよう、化 合物辞書番号をリンクキーとすることにより統合的に利用できるようにした。 利用者はインターネット上でJSTのWWWサーバに接続することにより化 合物名称、化学式、物性値、スペクトルピーク等の条件から化合物情報を検索 することができる。そして、その検索結果を、各機関のデータベースのデータ に関連させることが可能となっている。 JP 07 化学物質生分解性予測システムの開発 ○廣松 康一 ひろまつ こういち 化学品検査協会、大阪大 増本 茂和 ますもと しげかず 富士通九州システムエンジニアリング 矢可部 芳州 やかべ よしくに 化学品検査協会 西原 力 にしはら つとむ 大阪大 インターネット上で利用可能な化学物質の好気的微生物分解(生分解)性のデー タベースとこれを活用した生分解性予測システムを開発した。本システムは、 自動的にダウンロードされるJAVA Appletを用いて構造式を入力することによ り、「化学物質の審査及び規制に関する法律(化審法)」の微生物による分解 度試験データベース中の構造を検索(部分構造または完全一致)することがで きる。データベースに検索対象の化合物データが存在しない場合、入力された 構造式から106種類の部分構造と19種類の原子数や環数などのトポロジカルな 情報及び分子容や分子表面積・対称性等が自動的に計算され、経験則を体系化 した予測フローチャートまたは置換基寄与法を用いた構造活性相関式から生分 解性を予測してその結果を出力する。 JP 08 生物情報統合データベースシステムの構築 −新しい発想に基づいた生物情報管理法− ○福田 美紀 ふくだ みき 医薬分子設計研究所 瀧川 有紀 たきがわ ゆき 医薬分子設計研究所 豊田 哲郎 とよだ てつろう 医薬分子設計研究所 板井 昭子 いたい あきこ 医薬分子設計研究所 ゲノム解析が進む中、大量に排出される実験データの効率的な管理法・解析法 の開発が急がれている。しかし現状では世界中のウェブサイトに各種データが 無秩序に氾濫しており、どこにどのようなデータが公開されているのかを知る ことさえ難しい状況にある。さらにそれらの生物情報同士の関連付けは各ペー ジ間にはられたリンク情報に頼るしかなく、様々なデータを統合して扱うのは 大変難しい。このようにデータの相互関係の把握が困難であるのは、生物情報 の核であるアミノ酸や核酸の配列情報を一意に表すことのできるもの、人間で いえば「名前」にあたるものが存在していないためであると考えられる。そこ で我々はこの点に着目し、配列情報に「名前」をつける方法を考案した。この 方法を用いれば、散在している情報から容易に必要な情報のみを収集すること ができるようになる。今回は本法を利用したデータベース構築などについても 紹介する。 JP 09 錯体・有機金属化合物の双極子モーメントのデータベース作成(続報) ○山崎 昶 やまざき あきら 日赤看護大 以前より継続して集積中の、金属錯体と有機金属化合物、および関連する配位 子やイオン対などの双極子モーメントの実測値のデータを、関連の研究者の利 用が容易となることを意図して、パーソナルコンピュータ可読の形に整理して まとめた。現在までの所およそ三千レコードほどが集積された。多くの大権威 の述べられるとおり、既報のデータ集や便覧の類にこの種の貴重・かつ有益な 情報が含まれていることは確かであるが、あまりにも多くの不要なものの中か ら必要とされるものを手作業で探索するのは事実上不可能に近いから、権威あ る成書や総説などを基礎としてデータを集め、利用者の便を考えて索引用フィー ルドの付加や化学式の誤りの修正などを行った。部分的なデータベースファイ ルを何人かの錯体化学の研究者に依頼して種々のコメントを頂戴し、以後のさ らなる改善のための資料としている。 JP 10 立体化学の規範的コード化法の開発とコンホマーの識別 ○越野 広雪 こしの ひろゆき 理研 佐藤 寛子 さとう ひろこ 科技団さきがけ研究21 船津 公人 ふなつ きみと 豊橋技科大 鵜澤 洵 うざわ じゅん 理研 中田 忠 なかた ただし 理研 立体化学の情報は分子構造を取扱う上で重要な化学情報である.特に反応設計・ 予測やNMR化学シフト予測等においては,特定の予測部位の周りの立体化学を 含めた環境の類似と相違を識別することが必要である.これまでコンピュータ による分子の命名法などでは分子全体の立体化学を識別する方法は報告されて いるが,相対的な位置関係を一義的に表すことの難しさから,立体化学を反映 させたNMRの化学シフト予測等に適う,特定部位からの立体構造環境情報の規 範的コード化法はいまだ開発されていない.そこで,立体化学情報を規範的に コード化する新しい手法を開発した.今回はまず,コード化の方法と,本手法 によりコード化した種々の有機化合物をデータベース化し,コンホメーション の類似と相違を識別した結果について述べる. JP 11 Circular permutationを取り扱うことのできる構造局所アラインメント法 ○廣池 隆明 ひろいけ たかあき 生物分子工学研 藤 博幸 とう ひろゆき 生物分子工学研 蛋白質の局所の立体構造を比較してアラインメントを行う、構造局所アライ ンメント法は、ダブル・ダイナミック・プログラミングを用いて、1993年 にC.A.Orengo とW.R.Taylorにより開発されている。 しかし、この方法では、 Circular permutationの関係にある蛋白質のアラインメントが良好には行われ ない問題があった。  そこで、我々は、蛋白質どうしの構造を比較をする為のstructural environmentをCircular permutationに影響されない様に再構築して、構造局 所アラインメントを行う方法を開発した。 我々の方法により、通常の Circular permutationの関係にない蛋白質はもちろんのこと、Circular permutationの関係にある蛋白質のアラインメントも良好に行うことが出来る 様になった。 JP 12 二次元相関分光法による昇温脱離分析データの解析 ○杉田 記男 すぎた のりお 豊橋技科大 宮林 延良 みやばやし のぶよし 電子科学 阿部 英次 あべ ひでつぐ 豊橋技科大 昇温脱離分析法(Thermal Desorption Spectroscopy)は検体を昇温加熱し、 放出される脱離ガスを質量分析する分析法である。この手法は検体に含まれる 極微量の不純物の検出に威力を発揮する。しかし、複数の不純物が同じ温度 (あるいは近い温度)で脱離ピークを生ずる場合、これらを別々の物質として認 識することは困難である。 本研究ではこの問題の解決に二次元相関分光法を用いることを試み、成果を 得たので報告する。 JP 13 量子化学計算によるリチウムイオン電池材料の設計 ○田辺 和俊 たなべ かずとし 物質研 松本 高利 まつもと たかとし 物質研 長嶋 雲兵 ながしま うんぺい 融合研 リチウムイオン二次電池は携帯電話やノートパソコンなどに使用されているが、 小型化、大容量化などの機能向上が求められている。そこでリチウムイオン二 次電池の機能向上を目指して、負極材の炭素材料へのリチウムイオンの吸蔵の 構造や機構を解明するために量子化学計算による解析を行った。リチウムイオ ンーグラファイトのモデル系について、プログラムQ-Chemを用いて非経験的分 子軌道計算を行い、モデルサイズの影響などを考察した。その結果、モデルサ イズに関してきわめて興味深い結果がえられ、炭素電極の設計に有用な指針を 得ることができた。 JP 14 ライノウィルス外殻蛋白質の700ピコ秒の分子動力学計算 ○米田 茂隆 よねだ しげたか 北里大理 米田 照代 よねだ てるよ 北里大薬 梅山 秀明 うめやま ひであき 北里大薬 風邪の主要な病原であるライノウィルスの外殻蛋白質は外径300Åという巨 大な球殻状の分子集合体であり、単に内部に遺伝子を保護、運搬するだけでな く、ライノウィルスの感染、増殖に関して精巧な機能をもつ。我々は、特に宿 主細胞への吸着と脱殻のメカニズムの解明を目的として、我々が開発した回転 対称性境界条件という独自の方法により、ライノウィルスの外殻蛋白質の70 0ピコ秒の分子動力学計算を行った。このような巨大分子集合体のこのような 長時間計算は少ない。その分子動力学計算の原子運動の軌跡をもとに、従来の ような個々の蛋白質構造の変化よりも、むしろ、外殻蛋白質中で各蛋白質がど のように並進、回転の運動をしているかに焦点をあて、その集団運動の解析を 行った。その結果より、ライノウィルス外殻蛋白質が脱殻を開始する部分を議 論した。 JP 15 トライボロジーに関する計算化学的研究 ○周 慧 しゅう けい 東北大院工 田村 宏之 たむら ひろゆき 東北大院工 高見 誠一 たかみ せいいち 東北大院工 久保 百司 くぼ ももじ 東北大院工 宮本 明 みやもと あきら 東北大院工 機械や装置の小型化が急速に進むにつれ、原子、分子レベルの摩擦特性の解明 が求められている。しかし、トライボロジー材料の摩擦特性は、分子構造、分 子量、温度、滑り速度、負荷などに大きく依存し、一般的な法則性は導かれて いない。そこで、本研究ではトライボロジー材料の中でも、最も重要な潤滑剤 分子の設計を目指して、分子動力学法を活用し様々な分子量、分子構造を有す る潤滑剤分子のせん断場におけるダイナミックスを検討した。また、油性向上 剤及びさび止め添加剤などの金属表面への吸着特性を向上させるためには、金 属新生面と潤滑剤の相互作用についても検討が必要である。ここでは、密度汎 関数理論(DFT)に基づく第一原理量子化学計算を活用し、金属新生面上での 数多くの有機化合物の吸着エネルギーを検討した。本研究により、実験的には 困難であった潤滑油分子の分子構造とそのダイナミックスさらには吸着特性な どの関係を明らかにすることができた。 JP 16 Dual Ensemble Molecular Dynamics (DEMD) 手法の開発とゼオライト膜によ る気体分離への応用 ○小林 泰則 こばやし やすのり 東北大院工 森戸 英明 もりと ひであき 東北大院工 水上 浩一 みずかみ こういち 東北大院工 高見 誠一 たかみ せいいち 東北大院工 久保 百司 くぼ ももじ 東北大院工 宮本 明 みやもと あきら 東北大院工 無機多孔質膜は有機膜に比べて熱的安定性や化学的な安定性が高いため、発電 施設などから排出される高温の排ガスからの直接二酸化炭素分離への応用が期 待されている。分子シミュレーション手法は膜分離プロセスでの気体の吸着・ 拡散機構に関する知見が得られるため、非常に有用である。近年では、グラン ドカノニカル分子動力学法(GCMD)と呼ばれる新しい分子動力学法(MD)に関する 研究が行われている。GCMD法は定常的な圧力勾配下での気体透過などの従来の NVTアンサンブルMDでは取り扱うことができない非平衡過程を取り扱うことが できる手法であり、透過実験から得られる膜透過係数を直接算出できるという 利点がある。我々は圧力勾配を駆動力とした気体の透過シミュレーションなど の非平衡MDが行えるDual Ensemble MD手法を開発し、ゼオライト膜による二酸 化炭素分離シミュレーションを行った。 JP 17 タンパク質内電子移動グラフィックス ○柏木 浩 かしわぎ ひろし 九工大情報工 佐藤 文俊 さとう ふみとし 九工大情報工 吉廣 保 よしひろ たもつ 九工大情報工 岡崎 功 おかざき いさお 九工大情報工 上田 尚学 うえだ たかあき 九工大情報工 保田 慎一郎 やすだ しんいちろう 九工大情報工 恵良 信 えら まこと 九工大情報工 時枝 浩司 ときえだ こうじ 九工大情報工 佐藤 洋子 さとう ようこ 九工大情報工 本発表者らは密度汎関数法による大規模分子軌道計算プログラム(ProteinDF) を開発し、これを高効率に並列化した。本プログラムを光合成反応中心である クロロフィルダイマーのスピン密度分布の計算やヘムタンパク質の電子状態計 算に応用した。 JP 18 タンパク質全電子計算プログラム ProteinDF におけるオブジェクト指向技術と分散並列処理 ○吉廣 保 よしひろ たもつ 九工大情報工 佐藤 文俊 さとう ふみとし 九工大情報工 柏木 浩 かしわぎ ひろし 九工大情報工 発表者らはタンパク質の性質や反応性を電子レベルで理解することを目的に、 ガウス型基底関数を用いた密度汎関数法に基づく分子軌道法プログラム ProteinDF を開発・発展させてきた。これまでの計算で、我々の興味の対象で あるタンパク質(数千軌道以上)の全電子計算へ適用するならば、10〜100G FLOPS程度の計算能力が必要となることがわかっている。この計算能力を得る ために、最近のワークステーション(WS)の高性能化、ネットワークの高速化 を理由に、WSクラスタによる分散並列処理システムへの適用を考えて ProteinDFの並列化を行ってきた。本研究では、オブジェクト指向言語C++を使 用し並列化を行ったプログラムを、ワークステーションクラスタ上で実行させ 数十残基のタンパク質の全電子計算を行った。講演では並列化のために用いた オブジェクト指向的な技法とタンパク質の全電子計算の結果について報告する 予定である。 JP 19 III-V族窒化物系半導体の結晶成長過程に関する計算化学的検討 ○稲葉 祐策 いなば ゆうさく 東北大院工 小野津 崇之 おのづ たかゆき 東北大院工 高見 誠一 たかみ せいいち 東北大院工 久保 百司 くぼも もじ 東北大院工 宮本 明 みやもと あきら 東北大院工 窒化物系半導体による青色発光ダイオードやLEDでは、活性層としてInGaN が用いられ、可視光から紫外光までの波長をカバーする発光素子材料として注 目されている。しかし,サファイア基板上に成長したInGaN量子井戸構造では In組成の不均一化や結晶欠陥生成など、その成長過程に関して不明な点が多い。 そこで本研究ではIII-V族GaN系結晶の成長過程に関して計算化学的手法を用い て検討を行った。周期的DFT量子化学計算にはMSI社のCASTEPプログラムを用い た。擬ポテンシャルおよび平面波基底関数を用い、交換相関相互作用について はPerdewとWangが開発したものを用いた。InGaN混晶のモデルを作成し、その 最安定構造とトータルエネルギーを計算する事によってInGaNの結晶性につい て検討を行った。 JP 20 ヘプタフルバレンにおける擬Jahn-Teller効果のMCSCF法による解析 ○豊田 東雄 とよた あずまお 山形大教育 小関 史朗 こせき しろう 三重大工 非交互炭化水素に付随する特異な化学的性質は、擬Jahn-Teller効果の観点か ら興味が持たれ、理論・実験の両面から研究されてきた。 最近、私たちは共 役分子を対象にして、非対称平面構造の安定化の起源についてab initio RHF と MCSCF MO法を用いて検討した。 既知の非交互炭化水素の中で、ヘプタレ ンやヘプタフルバレンの分子構造は、非平面でしかも周辺炭素骨格に二重結合 が局在化していることがNMRスペクトルや X線結晶構造解析によって明らかに されている。 本研究では、擬Jahn-Teller効果の物理的描像を明らかにする ため、つまり、非平面構造の安定化の本質を考察するため、ヘプタフルバレン を取り上げ、平面構造から非平面構造への分子対称性の低下に寄与する因子を 解明する。 具体的には、平面な対称構造 (D2h)および非平面なD2 , C2v, そ してC2h構造の幾何学的なパラメーターをab initio MCSCF MO (6-31G(d)) 法 を用いて最適化し、それぞれの核配置における全エネルギーを、エネルギー分 割法に基づいて各成分に分割して解析する。 JP 21 第一原理計算による新規メタノール合成触媒の理論設計 ○坂原 悟 さかはら さとし 東北大院工 遠藤 明 えんどう あきら 東北大院工 高見 誠一 たかみ せいいち 東北大院工 Belosludov Rodion ぺろするどふ ろでぃおん 東北大院工 Zhanpeisov Nourbosyn ざんぺいそふ のるぼしん 東北大院工 久保 百司 くぼ ももじ 東北大院工 宮本 明 みやもと あきら 東北大院工 現在、エネルギー利用の高効率化と低環境負荷の観点から高品位燃料の合成が 期待されている。高品位輸送燃料の一つであるジメチルエーテルは、低温での メタノール合成が早急な課題である。そこで本研究では著者らが提唱している コンビナトリアル計算化学を活用し、新しい触媒材料の設計を試みた。その結 果、メタノール合成用触媒として実験的に工業化されているCu+を活性中心と する触媒が計算化学を用いても有効であることが確認され、さらにAg+、Au+が Cu+より高い活性を持つ可能性があることが示唆された。さらに本研究では別 の反応経路、担体効果に関する知見を明らかにした。 JP 22 遺伝的アルゴリズムを用いる1本鎖コラゲンモデルの安定構造探索 ○高橋 紘一 たかはし こういち 近畿大理工 田中 克裕 たなか かつひろ 近畿大理工 ペプチドの安定な立体構造をアミノ酸残基の配列情報から物理的に決定する ことは,蛋白質の立体構造予測のための伝統的なアプローチである.昨年 Kramerらにより human type IIIコラゲンに含まれる合成モデルペプチドのX線 結晶構造解析が行われ,コラゲンの3本鎖ヘリックス構造が確定された.各鎖 はPro-Hyp-Glyの繰り返しからなるゆるいヘリックス構造をとり,鎖間に水素 結合がある. そこで,大域的安定解探索法である遺伝的アルゴリズムを用いて,1本鎖コ ラゲンモデルの安定なコンフォメーションを求めた.アルゴリズムは Mathematicaで記述し,適応度関数として半経験的MO計算(WinMopac)を使い, 最終的にはab initio MO法で安定構造を求めた.求めた安定構造はX線構造の3 本鎖中の構造と同じであり,コラゲンの分子構造が本質的に,繰り返し単位 Pro-Hyp-Glyに依存するものであることがわかった. JP 23 超高速分子軌道計算専用機MOEngineの開発 ○高島 一 たかしま はじめ 大正製薬創薬研 北村 一泰 きたむら くにひろ 大正製薬創薬研 小原 繁 おばら しげる 北海道教育大教育 網崎 孝志 あみさき たかし 島根大総合理工 村上 一彰 むらかみ かずあき 九州大学院システム情報 早川 潔 はやかわ きよし 電総研 山田 想 やまだ そう 富士ゼロックス総合研究所 稲畑 深二郎 いなばた しんじろう 富士ゼロックス総合研究所 宮川 宣明 みやかわ のぶあき 富士ゼロックス総合研究所 田辺 和俊 たなべ かずとし 物質研 長嶋 雲兵 ながしま うんぺい 融合研 Hartree-Fock計算において計算時間の殆どを占めるのが二電子積分の計算であ る。この計算は基底関数の4乗に比例する演算量を必要とするため、現実に即 した巨大分子系の非経験的分子軌道計算を手軽に実行できない。そこで、現在 の数10倍〜100倍程度のコストパフォーマンスをもちワークステーションやPC に簡単に接続できる形態の専用並列計算機MOEngineの開発を試みたので報告す る。MOEngineは、専用LSIを搭載した複数のボードを含む筐体で構成され、二 電子積分及びフォック行列の計算を高速に実行する。積分計算にはデータ並列 性の高い小原の方法を採用し、漸化展開で用いられる積和演算をパイプライン 処理し高速計算を行なう。また、我々は、(専用計算機のような)並列各プロ セッサのメモリ量が小さいの場合にも大次元のフォック行列を計算できるよう な新規並列フォック行列作成アルゴリズムを考案したのでこれについても報告 する。 JP 24 分子の電子状態計算プログラムHAM/3の修正 ○藤本 徳之 ふじもと のりゆき 信州大繊維 成田 進 なりた すすむ 信州大繊維 渋谷 泰一 しぶや たいいち 信州大繊維 分子の電子状態計算プログラムHAM/3はLindoholmらによって開発された半経験 的計算プログラムの一つである。それは、分子の軌道エネルギーや生成熱、イ オン化エネルギー、励起エネルギーなどの色々な物理量を分子の原子座標と原 子の種類を元にして計算するプログラムである。しかし、対称性を持つ分子の 計算結果に不具合を生じるという欠点を持つ。このことから、長年このプログ ラムは対称性を持たない分子にしか使われてこなかった。当然の事ながら、対 称性の優れた分子であるフラーレンC60に対しての計算結果は、その対称性が 若干崩れて出る。本研究では、対称性に関係するトラブルの原因を突き止め、 そのプログラム修正を試みた。 JP 25 Ab initioペア近似法による巨大分子計算プログラムの開発 ○中野 達也 なかの たつや 国立衛研 神沼 二眞 かみぬま つぐちか 国立衛研 上林 正巳 うえばやし まさみ 生工研 佐藤 智之 さとう としゆき 富士総研 秋山 泰 あきやま ゆたか RWCP 北浦 和夫 きたうら かずお 阪府大 生体高分子のような巨大分子への適用を目的として、北浦らが提唱したab initioペア近似法に基づいた巨大分子計算プログラム ABINIT-MP の開発を行っ た。 JP 26 ウレタン化反応のアミン触媒機構の解析 ○山下 修 やました おさむ 花王 小澤 忠広 おざわ ただひろ 花王 ウレタン樹脂製造触媒反応の量子化学による解析の報告です。イソシアネート とOH基とのウレタン化反応を無触媒とアミン触媒の両機構を非経験的分子軌道 法(Gaussian)で解析した。無触媒系では構造的にタイトな4中心の遷移状態 を経由する。一方、アミン触媒が存在すると複数の遷移状態をもつ逐次反応で 進行することにより活性化エネルギーが低下している事が分かった。これらの 遷移状態の形態は、アミンにより活性化されたイソシアネートがOH基からプロ トン移動、生成したアルコキサイドのカルボニル炭素の攻撃、触媒アミンの脱 離、と特徴付けられた。この機構からアミンの塩基性度の最適値の存在が理論 的予測され、その後の実験データの整理により確認できた。 JP 27 C-13化学シフトテンソルを利用したβ-ジケトンエノールの分子構造解析 ○今城 文雄 いましろ ふみお 京大院理 分子内水素結合型のβ−ジケトンエノールでは速い水素移動の存在が考えられ ている。溶液状態では平均化されて対称構造となっているものでも、結晶状態 では非対称構造となっている場合が多い。これらの状態でも水素移動は存在す るはずであるから構造の平均化が存在すると考えられる。1,1,2,2-テトラアセ チルエタンも結晶状態では非対称型分子内水素結合をもつエノールとして存在 している。そこでモデル化合物を用いて ab initio計算により分子構造とC-13 化学シフトテンソルを計算した結果、35% 存在する反転型エノールとの間での 速いエノール−エノール異性化を仮定すれば実測値を説明することができるこ とがわかった。また、中性子線回折による分子構造もこの結果と矛盾しない。 JP 28 フラーレン分子の局所的反応性と HOMO-LUMO エネルギー間隔の関係 ○相原 惇一 あいはら じゅんいち 静岡大理 一般に、HOMO-LUMOエネルギー間隔が小さい分子ほど反応性は大きい。 HOMO-LUMOエネルギー間隔が小さいということは、HOMO のエネルギーが大きい か、LUMO のエネルギーが小さいか、またはその両方であることを意味し、フ ロンティア軌道理論からも大きな反応性が予想される。我々は最近、炭素数 90 までのフラーレンのすべての i solated pentagon 異性体について結合共 鳴エネルギーの最小値(min BRE)と T 値を計算し、両者の間によい相関があ ることを見出した。min BRE は、トポロジー的共鳴エネルギーに対する個々の π結合の寄与の最小値であり、そのπ結合付近での反応性と関係している。T 値は HOMO-LUMO エネルギー間隔に共役原子の数を掛けたものである。このこ とから、フラーレンでは、反応性の大きな部分構造があると HOMO-LU MO エネ ルギー間隔が小さくなる傾向があるといえる。 JP 29 分子動力学法によるスチレンーエチレン共重合体のガラス転移温度計算 ○戸木田 裕一 ときた ゆういち 電気化学工業中央研究所 鈴木 茂 すずき しげる 電気化学工業中央研究所 岡本 彰夫 おかもと あきお 電気化学工業中央研究所 桑島 聖 くわじま さとる ナノシミュレーション スチレンーエチレンランダム共重合体(Stーmol%:0,10,30,50,100)のガラス 転移温度(Tg)を分子動力学法により計算を行った。スチレンの含量が増加す るに従って、Tgが増加するという実験の傾向を再現することができた。絶対値 でも、最大で約60Kのずれにとどまった。また、シミュレーション前の初期 構造依存性についても検討を行った。その結果、同じ1次構造でも、発生させ る初期構造により無視できない程度の計算値のばらつきが生じた。この結果か ら、同じポリマーでもいくつか初期構造を変えた結果を平均する必要があるこ とが示唆された。 JP 30 ケモメトリックスによるプラスチック廃棄物の判別 ○田辺 和俊 たなべ かずとし 物質研 松本 高利 まつもと たかとし 物質研 鈴木 康志 すずき やすし 島津製作所 岡田 行雄 おかだ ゆきお 日産自動車 プラスチックのリサイクルのためのプラスチック廃棄物の判別では近赤外反射 測定が現在有力な方法であるが、この方法では家電製品や自動車用品に使用さ れている黒色のプラスチックの判別が困難である。また、家電製品や自動車用 品のプラスチックリサイクルでは、プラスチック廃棄物のグレードの判別も必 要である。そこで黒色プラスチックのグレードの判別手法を開発するために、 赤外分光測定とケモメトリックス解析を組み合わせた方法を検討した。実際の 自動車用の黒色プラスチック試料について試験した結果、この方法で黒色プラ スチックのグレードの判別手法を開発することができた。 JP 31 ニューラルネットワークを用いたフロン代替化合物の物性推算、および、新規 化合物の逆設計 ○山本 博志 やまもと ひろし 旭硝子 浦田 新吾 うらた しんご 地球環境産業技術研究機構 オゾン層を破壊しない、かつ、地球温暖化に対する影響の小さいフロン代替化 合物の開発は非常に重要な課題である。しかしながら、こうした含ハロゲン化 合物の物性は多くは知られていない。また、実際に候補となりうる化合物を合 成するにしてもこうした化合物は非常に高価であることが知られている。われ われはこうした問題に対し、既知のハロゲン化合物のデータを収集しそのデー タを解析することによって物性推算式を構築した。物性推算式としてはニュー ラルネットワークを用いた。こうした推算式を用いることによって、実際に化 合物を合成する前にその化合物の物性を予測することが可能となった。次に、 このように構築された物性推算式を用いて逆に欲しい物性を持つ化合物をリス トアップするシステムを開発した。当日はデモを交えてこうしたシステムを紹 介したい。 JP 32 ニューラルネットワークによる高分子の物性の予測 ○田辺 和俊 たなべ かずとし 物質研 松本 高利 まつもと たかとし 物質研 新規高分子の開発では高分子の物性の予測が重要である。高分子物性の予測手 法としては分子動力学法などの計算化学的方法も試みられているが、計算時間 が猛烈にかかる上に系統的誤差を与える欠点がある。一方、原子団寄与法は迅 速、簡便な方法として実用性は高いが、精度を上げようとすると補正項が際限 なく増加するという問題点がある。これは高分子の物性が本来、原子団に割り 当てた定数の線形結合では表せないためであり、このような非線形な関係の解 析にはニューラルネットワークが有効である。そこでニューラルネットワーク を用いて高分子物性の予測を検討した。高分子の物性の中で最も重要なガラス 転移温度をモノマーユニット構造から予測するために、モノマーユニット構造 におけるC-Hなどの結合の数を入力して学習を行った。テストを行った結果、 温度差600K以上のTgの実測値をよく再現する手法を開発することができた。 JP 33 ケモメトリックス手法を用いた材料開発支援プログラムの開発(3) −カウンタープロパゲーションを用いた候補のクラスタリング− ○棚田 東作 たなだ とうさく 豊橋技科大 荒川 正幹 あらかわ まさもと 豊橋技科大 船津 公人 ふなつ きみと 豊橋技科大 西村 竜一 にしむら りゅういち 三井化学 計量化学の分野では、PLS(Partial Least Squares)法や主成分分析法などの 手法を用いて、化学データをモデル化する研究が行われている。そして、その モデル式による物性予測は、材料開発などさまざまな分野で応用されている。 しかし、このような通常の物性予測法では複数の目的物性値を同時に満たす説 明変数の組を見つけることは困難である。そこで、これを実現する逆解析プロ グラムを開発した。 前回(日本化学会第77秋季年会)は線形重回帰分析、PLS法、 QPLS(Quadratic PLS)法、ニューラルネットワークなどのモデリング手法を用 いて作成した予測モデルにより逆解析を行い、目的物性値を満たす説明変数の 候補(つまり材料候補)を提案するプログラムを作成した。今回は、逆解析に より提案された候補をカウンタープロパゲーション(CP)を用いて、その特性に 応じてクラスタリングを行うプログラムを開発した。CPは高次元空間での応答 の変化の様子がKohonenマップ上での応答の変化として三次元的に視覚化でき るため、候補の解析が容易にできる。 JP 34 Multiway PLS法を用いた活性コンフォメーションと重ね合わせルール選択手法 ○荒川 正幹 あらかわ まさもと 豊橋技科大 船津公人 ふなつ きみと 豊橋技科大 3次元構造活性相関において活性コンフォメーションと重ね合わせルールを決 定することはモデルの適用能力を左右する重要な因子である。これら因子はお 互いに密接な関連があり、X線結晶解析などの構造情報がない場合には、容易 には推定できない。本研究では、Multiway PLS法による合理的な活性コンフォ メーションと重ね合わせルール推定法を提案する。Multiway PLS法はPLS法を 多次元解析に拡張した手法であり、PLS法と比較してノイズに強い安定なモデ ルを与えることができる。サンプル、フィールド変数、コンフォメーションセッ ト、重ね合わせルールからなる4次元配列を説明変数としMultiway PLS法で阻 害活性との関係を検討した。モデル係数値から阻害活性に大きく寄与する活性 コンフォメーションと重ね合わせルールを推定することができた。 JP 35 遺伝アルゴリズムを用いた剛球モデルに基づくタンパク質立体構造比較 ○中山 伸一 なかやま しんいち 図書館情報大 Willett, Peter ウィレット,ぺーター The University of Sheffield 吉田政幸 よしだ まさゆき 図書館情報大 タンパク質の立体的な類似度は,その機能や進化を考える上で重要である。 我々は,タンパク質の立体的な類似度として,アミノ酸を剛球としたときの重 なり容積を考えた。しかし,この類似度は二つのタンパク質の最適な重なりを 求めるのに膨大な計算を必要とする。遺伝アルゴリズムは多数の状態の中から 最適状態に近い状態を求める高速な方法の一つである。そこで遺伝アルゴリズ ムを用いてタンパク質間の類似度を求める方法を検討した。 遺伝アルゴリズムは,様々な変型が提案されており,問題ごとに妥当な方法 論を検討する必要がある。本研究においても係数を変えた幾つかの遺伝アルゴ リズムを比較検討した。その結果,剛球モデルによるタンパク質の構造比較に 最適なアルゴリズムとその係数を明らかにした。さらに,この方法論のデータ ベース検索への利用の可能性についても考察する。 JP 36 低分解能質量スペクトルにおける部分構造識別関数構築のための変数選択手法の検討 ○吉田 浩士 よしだ ひろし 豊橋技科大 船津 公人 ふなつ きみと 豊橋技科大 Kurz Varmuza クルツ・ファルムーツァ Technical University of Vienna 低分解質量スペクトルデータは離散的でコンピュータで扱いやすく、少量の試 料でも測定できるという長所を持つため、今日構造解析に対し重要な方法の一 つとなっている。しかし部分構造-部分スペクトル間の相関が一般的に成り立 たず、測定条件により測定結果が変わるなどの欠点がある。本研究では上述の 長所を積極的に利用し、有機化合物の構造推定に役立つ知識の獲得を目指すも のである。特に本研究では、スペクトルデータから部分構造の「ある」「なし」 といった2クラス分類のための識別関数を構築する。識別関数を構築するため に、まずスペクトルデータの特徴を400個の記述子で表した。しかし400個とい う記述子は実用上好ましくなく、変数選択を行う必要がある。変数選択には 1)Fisher比、2)遺伝的アルゴリズムが考えられる。今回は統計手法としてLDA およびPLSを用いることとし、変数選択を行い識別関数を構築した。この結果 30個程度の変数を用いて識別関数を構築することができた。 JP 37 カスケードモデルによる定性的構造活性相関 ○岡田 孝 おかだ たかし 関西学院大情報メディア教育センター データマイニング特にマーケットバスケット分析で注目されている相関ルール 探索の技法は、非常に柔軟な入力が可能であり、多様な分野への適用が期待さ れている。筆者はこれを一般的なデータ解析技法へと拡張するカスケードモデ ルを提案した。このモデルでは、カテゴリー変数の平方和分解を規範として、 説明力の強いルールを導出することができる。得られたルール群は全体の平方 和をできる限り多く説明する簡潔な表現を取るため、重回帰分析や主成分分析 が行おうとする解析をルール表現でわかりやすく実行できる。他方、化学グラ フの表現として、視点となる原子を与え、グラフ内の各原子をそこからの距離 と原子の対で表現することできる。この表現はambiguousであるが、活性情報 と併せて、分子の情報をアイテム群で表現できるため、カスケードモデルによ 取り扱いが可能となる。本報告では、簡単な生理活性物質のデータセットを対 象として、上記手法を適用した結果を発表する。 JP 38 コンピュータ集約型検定法の一般化加法モデルへの適用と応用 ○高木 達也 たかぎ たつや 大阪大院薬 渡里 智恵子 わたり ちえこ 大阪大薬 宮田 幸治 みやた こうじ 大阪大院薬 黒川 絵美子 くろかわ えみこ 大阪大薬 藤原 英明 ふじわら ひであき 大阪大医 黒川 顕 くろかわ けん 大阪大遺伝情報実験施設 長谷川 義高 はせがわ よしたか 大阪大遺伝情報実験施設 安永 照雄 やすなが てるお 大阪大遺伝情報実験施設 近年、一般化加法モデル(GAM)、交替条件付期待値(ACE)、Multiple Additive Regression Trees (MART)などの、平滑化法、ノンパラメトリック 回帰法が盛んに応用され始めている。しかし、国内の薬学、化学分野への応用 はまだ数えるほどしかない。また、属性の選択、検定に関しても、多くの手法 では客観的な基準を設定することが容易でない。すでに当研究グループでは、 ブートストラップ法に代表されるコンピュータ集約型検定・推定手法の薬学・ 化学分野への応用を積極的に試みてきただけでなく、独自に拡張シフト検定法 のアルゴリズムを開発し、ANNなどに適用してきた。今回、他分野ではすでに 多くの応用例のあるGAMを取り上げ、拡張シフト検定法を含むコンピュータ集 約型手法を導入、S-Plus付属の標準的医薬学データの解析に適用、オリジナル の結果と比較してみたところ、比較的良好な結果を得ることができた。 JP 39 学習順序に依存しない自己組織化法の開発 ○阿部 貴志 あべ たかし 山形大院工 金谷 重彦 かなや しげひこ 山形大工 工藤 喜弘 くどう よしひろ 山形大工 木ノ内 誠 きのうち まこと 山形大工 大平 賢 おおだいら まさる 山形大院工 生物には種固有のコドン利用特性があることが知られている。本研究では、遺 伝子をコドン利用特性により分類することを検討した。初めに主成分分析を用 いて、線形解析を行った。次に、コホネンの自己組織化法(Self Organizing Map)を用いて、非線形解析を行なった。この時の、自己組織化法の学習法の改 善を行なった。1999年現在までに、21種のバクテリアの全塩基配列が明らかと なっている。これらの生物種を用いて検討した。 JP 40 SALSによる数値計算曲線のカーブフィッティング -- 多段階プロトン解離平衡の精密解析 -- ○加藤 良清 かとう よしきよ 山形大理 山田 明文 やまだ あきふみ 長岡技科大工 小野寺 準一 おのでら じゅんいち 山形大工 鵜浦 啓 うのうら けい 山形大理 最小二乗法標準プログラムシステム SALS は、古くから化学分野で利用されて 来た。SALSには、解析解がない場合も、数値計算が可能であれば、計算曲線を 実験値に最小二乗フィッティングする機能が早くから組み込まれている。本研 究では吸光度測定および希薄溶液の伝導度測定から水の自己解離を考慮し、多 段階プロトン解離平衡を精密計算するプログラムを例に、SALSを用いて数値計 算結果の実験値へのあてはめを実施するプログラムの開発とその応用例を報告 したい。このようなプログラムは既に多くが公表されているが、SALSのライブ ラリーパッケージ を利用する方法は、読みやすい FORTRAN で記述できること、 など見直されるべき特徴を有している。 JP 41 インターネットを活用する「立体化学」独習システムの試作 竹内 敬人 たけうち よしと 神奈川大理 吉田 弘 よしだ ひろし 広島大理 守谷 崇 もりや たかし 創価大工 ○伊藤 眞人 いとう まさと 創価大工 インターネット、特にWWWは、その双方向性を活用したインターラクティブな 遠隔教育や独習システムの新しい媒体として注目されている。化学教育で必要 不可欠な構造と運動や反応に関する内容を、効果的に理解させるのに不可欠な 図表や動画像を活用するには、javaやVRMLを用いて開発された素材を併用する のが有効である。われわれは、このような化学教育教材の一例として「立体化 学」を取りあげ、インターネット上で動作する独習システムを試作した。この システムの特徴は、(1)cgiによるインターラクティブなプログラム学習:質問 に対する学習者の回答に応じて、次の質問に進むか解説を見せるかを判断する、 (2)javaやVRMLによる動画や三次元グラフィクス画像:分子の構造とダイナミ クスを視覚的に体験させる、および(3)インターネット上に分散した素材の有 機的活用:遠く離れたサーバーにある素材にリンクして活用する点である。